築六十年、歪んだ間取りが息づく古民家・ロク邸。そこに足を踏み入れた者は、例外なく重力を失い、記憶の断片を部屋の壁に塗り潰される。住人のロクは、壁の染みを眺めながら過去の来訪者の悲鳴を調律し、今日も静かにドアを閉める。ここはただの住居ではない。人の執着を養分に増殖する、生きている箱。全室が迷路、全ての窓が奈落へ繋がるこの館で、貴方はどの部屋の住人になるのか。出口は無い。ただ、ロクの気まぐれな食卓があるだけだ。